記事の目的
BIツールはデータの可視化・分析を行い、事業の課題探索や意思決定を支援するツールです。 近年ではBIツールの需要が高まると同時に様々なBIツールが増えていますが、その中でもTableauとLooker Studioは利用者の多い主要ツールとなっています。 そこで今回はTableauとLooker Studioを機能別に比較します。
BIツールの導入や、利用を検討している方への参考になれば幸いです。
機能一覧表
ざっくり工程 | 工程詳細 | Tableau | Looker Studio |
---|---|---|---|
1.可視化前のデータ準備 | データの収集 | ○ ・データソース:70以上 ・ローカルファイル:Excel・CSV・JSON・PDFファイルなど、その他にも様々なファイルが取り込み可能 | ○ ・データソース:800以上(パートナー商品含む) ・ローカルファイル:CSVのみ |
データの蓄積 | ○ ・データベース接続 ・ローカルファイル | × | |
データの加工 | ○ ・カスタムSQLによるデータ加工が可能 ・Tableau Prepによりノーコードでデータ加工が可能 | ○ ・カスタムSQL(カスタムクエリ)によるデータ加工が可能 ・Looker MLによるデータ加工が可能 | |
2.可視化する | 可視化 | ◎ ・チャートのバリエーションや細かいカスタマイズが豊富 | ○ 作成可能なチャートに限りあり |
3.可視化後の管理・運用 | 配信・共有機能 | ○ ・イメージまたはPDFのメール配信 ・URLの共有 ・埋め込み用URLの発行 | ○ ・PDFのメール配信 ・URLの共有 ・埋め込み用htmlタグ作成 |
メタデータ管理 | ○ ・追加機能であり(Tableau Catalog) | × | |
ジョブ管理 | ○ ・配信や抽出のスケジューラー機能あり | × | |
パフォーマンス管理 | ○ ・データのクエリの最適化 ・キャッシュの活用 ・データの圧縮 ・インデックスの活用 | × | |
4.可視化を極めるための学習方法 | コミュニティ | ○ ・Tableau Community(公式) ・ユーザーが運営しているコミュニティも多くあり、交流・技術共有が非常に活発(JTUGなど) | ○ ・Looker Studio Help Community(公式) |
学習リソース | ○ 以下が無償利用可能 ・Tableau Developer ・Tableau Public ・Tableau Desktop体験版(14日間) | ◎ Googleアカウントを所持していれば無償で利用可能(有償版もある) | |
資格 | ○ 以下が無償利用可能 ・Tableau Desktop Specialist ・Tableau Certified Data Analyst ・Tableau Server Certified Associate | × | |
テンプレート・サンプル | ○ 以下が無償利用可能 ・Tableau Public | ○ ・Report Gallary |
機能比較の詳細
1.可視化前のデータ準備
データの収集
データを蓄えているサービスからデータを抜き出してくる機能。
Tableau
- データソース:70以上
- ローカルファイル:Excel・CSV・JSON・PDFファイルなど、その他にも様々なファイルが取り込み可能
公式の情報はこちら
Looker Studio
- データソース:800以上(パートナー商品含む)
- ローカルファイル:CSVのみ
公式の情報はこちら
データの蓄積
データを保管・管理する機能。
Tableau
- データベース接続
- ローカルファイル
Looker Studio
- なし
データの加工
収集されたデータを整理し、必要な形式に変換する機能。 例としてデータの結合や分割、データのフィルタリングやソートなどが含まれる。 また、必要な計算や集計を行ったり、データの形式を変換したりすることもデータの加工に含まれる。
Tableau
- カスタムSQL
- Tableauから直接データベースにSQLを発行し、データ加工が可能。
- Tableau Prep
- コードを書かなくてもデータクレンジング・テーブル結合・集計などのデータ加工が可能。
Looker Studio
- カスタムSQL(カスタムクエリ)
- Looker Studioから直接データベースにSQLを発行し、データ加工が可能。
- LookMLを使用してデータモデルを作成
- LookMLは、Looker・Looker Studioで使用可能なデータモデリング言語。
- データの結合、変換、フィルタリングなどの操作をLookMLで定義可能。
2.可視化する
可視化
データをグラフやチャートなどの視覚的な形式に変換する機能。 可視化はBIツールのメインとなる機能。
Tableau
- 「表示形式」機能により初心者でもチャート作成可能。
- 豊富なオプションを活用する事で様々なチャートへカスタマイズ可能。
作成者:我如古さんのダッシュボードリンクはこちら
Looker Studio
- 「グラフを追加」からチャートタイプを選択
※コミュニティビジュアライゼーションを利用する事でデフォルト以外のチャートを作成する事も可能ではあるが、あくまでベータ版としての提供。
3.可視化後の管理・運用
配信・共有機能
作成した可視化を配信・共有する機能。 レポート利用者に閲覧して貰えない事象を回避するためにも、 メールやSlackに配信を行い閲覧をプッシュする事が機能として非常に重要である。
Tableau
- イメージ形式・PDF形式、もしくはその両方をメール配信
- アクセス権の制御によって許可したユーザーのみに公開
- 共有用のURL発行(カスタムビューの利用により、フィルターを操作した状態で共有可能)
- 埋め込み用URL発行
公式の情報はこちら
Looker Studio
- PDF化したレポートをメール配信
- URLを共有しWebブラウザでアクセス可能
- Webページに埋め込むhtmlタグ作成
メタデータ管理(データカタログ)
データに関する情報や属性を管理し、データの正確性や信頼性を確保するための機能。 この管理により、データの起源や更新履歴、データの定義や意味など追跡可能。 データ活用の現場でありがちな「データに詳しい人に聞かないと分からない」という状況を回避する事ができ、 近年では注目されている機能。
Tableau
※Tableau Server/Cloudのアドオンライセンスであり、使用するにはTableau Data Managementの購入が必要(Tableau Catalog)
- テーブル・カラムの利用者が追跡可能
- テーブル・カラム削除時の判断に大きく役立つ。
- データ品質に対する警告
- ユーザーが古い情報を閲覧するなどした場合に警告を出す設定が出来る。
- データの詳細
- ダッシュボード閲覧時にメタデータを表示する事が可能。
公式の情報はこちら
Looker Studio
- なし
ジョブ管理(ジョブスケジューラ)
定期的なデータの配信や抽出をスケジュール設定するための機能。 具体的には、特定のデータの自動更新や定期的なレポートの配信を設定することが可能。 ジョブ管理機能によって、ユーザーは手動でデータ更新を行う必要がなくなり、自動的に最新のデータを取得することができる。
Tableau
- 配信、データ抽出のスケジュール設定が可能
Looker Studio
- なし
パフォーマンス管理
BIツールがデータのクエリや表示において効率的で高速な動作を維持するための機能。 パフォーマンス管理によって、大規模なデータセットや複雑なクエリでもスムーズな操作やレポート作成が可能となる。
Tableau
- データのクエリの最適化
- クエリの実行計画を最適化するための自動チューニング機能。
- キャッシュの活用
- クエリ結果や計算結果をキャッシュに保存して再利用することができる機能。
- データの圧縮
- データの圧縮技術を使用して、データのサイズを効果的に削減できる機能。
- インデックスの活用
- データのインデックスを作成して、データの検索や参照を高速化することができる機能。
Looker Studio
- なし
4.可視化を極めるための学習方法
コミュニティ
コミュニティとはユーザー同士が交流し、情報や知識を共有する場所やグループ。
Tableau
- Tableau Community(公式)
- ユーザーが運営するコミュニティも数多く存在している
Looker Studio
学習リソース
Tableau・Looker Studioともに無償で体験可能。
Tableau
- Tableau Developer Program(無償)
- Tableau Cloudの個人用開発サンドボックス
- Tableau Public(無償)
- ダッシュボードをパブリッシュし全国に公開できる無料プラットフォーム
- Tableau Desktop体験版(無償で利用可能だが利用期間は14日間)
- Tableau Desktopを14日間、体験する事が可能
Looker Studio
- Googleアカウントを所持していれば無償でLooker Studioが利用可能(Looker Studio Proは有償)
資格
データを保管・管理する機能。
Tableau
- Tableau Desktop Specialist
- Tableau Certified Data Analyst
- Tableau Server Certified Associate
Looker Studio
- なし
テンプレート・サンプル
以下は公式の情報だが、Tableau・Looker Studioともに非公式(ユーザーやパートナー企業)によるテンプレートも数多く存在している。
Tableau
Looker Studio
まとめ
どちらが優れているかは、使用する目的や要件によって異なります。 最終的なツールの選択は、具体的なニーズやプロジェクトの要件に基づいて行うべきです。 まずはそれぞれのツールをトライアルで試してみる事から始め、その際に特性や操作性の比較を行う事をお勧めします。
Tableau
- 大規模な組織や、長期的運用に向いている
- 上記運用を進めていく上で重要なジョブ管理・メタデータ管理・パフォーマンス管理が備わっている
- 閲覧制限など細かく設定可能
- 学習コンテンツが豊富
- 公式資格やユーザー会などが活発
- 近年ではTableau専門の書籍も増えてきている
- 豊富なオプションを活用する事で様々なチャートへカスタマイズ可能
Looker Studio
- 小規模な組織や、まずはBIツールを体験したいというケースに向いている
- Googleアカウントさえ作成すれば誰でも無料で利用可能